オーストラリアの皮膚科 日本人旅行者へのアドバイス

オーストラリアの皮膚科 日本人旅行者へのアドバイス

ブリスベンはクイーンズランド州南東部に位置し、美しい自然と太陽の光が降り注ぐビーチにも恵まれています。しかしながら、オーストラリアの気候は時に、私たち日本人にも様々な肌の悩みをもたらすこともあります。

ここでは、オーストラリアに滞在して20年近くとなる日本人医師としての洞察に基づき、オーストラリアでの皮膚科疾患の理解と治療に役立つ総合的なガイドをご紹介します。

皮膚がん啓発

オゾンホールに近いオーストラリアは、世界でも最も高いレベルの紫外線にさらされます。日焼けによる肌トラブルを防ぐために欠かせない対策として、日焼け止めを定期的に塗ること、つばの広い帽子をかぶること、日陰を探すことを心がけましょう。肌の弱い乳幼児には特に気を付けてあげてください。

オーストラリアでは皮膚がん、特にメラノーマがよく見受けられます。疑わしいほくろが気になる場合は、皮膚科での精密検査を受けてもらいましょう。

皮膚がんの早期発見は、治療成績を劇的に向上させる鍵となるため、オーストラリア滞在歴の長い高齢の患者さんには特に、毎月の自己検診と年に一度の専門家による皮膚検診を受けることをお勧めしています。

オーストラリアでは、70歳までに約3人に2人が何らかの皮膚がんと診断されると言われています。

日焼け

オーストラリアの日差しは日本より強いと言われています。オーストラリアの日差しはとても強烈で、夏場は数時間でひどい日焼けをしてしまうこともよくあります。海やプールに入る場合は特に、こまめに日焼け止めクリームを塗ってください。

ひどい日焼けをした場合、皮膚は赤く腫れて激しい痛みを伴います。日焼けで水ぶくれができたり、皮膚が腫れたり、生傷ができたりした場合は、迅速な対応が不可欠です。まずは、それ以上のダメージを防ぐために、すぐに日光から離れましょう。

保冷剤でやけどを冷やしたり、冷たいシャワーを浴びたりすると良いでしょう。ひどい日焼けは脱水症状を起こすことがあるので、水分を十分に摂ることも大切です。イブプロフェンなどの市販の鎮痛剤は、痛みや腫れを抑えるのに役立ちます。

水ぶくれができた場合は、水ぶくれが保護膜の役割を果たしてくれます。感染を防ぐため、自分で水ぶくれを破裂させないことが重要です。代わりに、滅菌ガーゼでゆるく覆うのも良いでしょう。保湿ローションを塗ると乾燥が和らぎますが、皮膚に熱を閉じ込める石油を含むクリームやローションは避けてください。クリニックでは、患部の処置やクリームの処方を行います。

日焼けに高熱や激しい痛み、脱水症状などの症状を伴う場合は、すぐに医師の診察を受けてください。

湿疹と乾燥肌

湿疹とは、皮膚が赤くなり、かゆみを伴い、炎症を起こす疾患群の総称です。乳幼児から見受けられるアトピー性皮膚炎は、最も一般的な湿疹の一種です。アトピー性皮膚炎では、皮膚のバリア機能に影響を及ぼし、水分が失われ、アレルゲンや刺激物質が皮膚に侵入しやすくなります。

ブリスベンでの気候の変化は、時として敏感な肌に大きなダメージを与えることがあります。敏感肌の方が湿度の高い日本から乾燥したブリスベンに来た場合、湿疹が発症してしまうこともよくあります。日本からワーホリで来ている方の中には、慣れないファームでの外仕事や、レストランでの水仕事で、肌荒れや手荒れがひどくなるケースが良く見られます。

以下のようなことが原因で湿疹の症状が悪化する可能性があります:

・刺激物: 石鹸、洗剤、シャンプー、消毒剤など。

アレルゲン: 花粉、ダニ、ペット、カビなどのアレルゲンが症状を悪化させます。

微生物: 一部の細菌、ウイルス、真菌は症状の悪化を引き起こすことがあります。

極端な温度: 非常に暑かったり寒かったり、湿度が高かったり低かったり、汗をかいたりすると、症状が誘発されることがあります。

・食物: 乳製品、卵、ナッツ類、種子類、大豆製品、特定のジュース、小麦は、人によってアレルゲンとなり、湿疹の再発又は悪化を引き起こすことがあります。

ストレス: 精神的ストレスは湿疹を悪化させることがよくあります。

ホルモン: 女性の場合、月経や妊娠などホルモン値が変化する時期に、湿疹が悪化することがあります。

定期的に保湿し、肌に優しいスキンケア製品を使用し、乾燥を防ぐために水分補給をすることで、湿疹をうまく管理することができます。かゆみや赤みが続く場合は、医師の診断を受けてください。

蕁麻疹

蕁麻疹は、皮膚に盛り上がったかゆみを伴う湿疹ができ、その周囲に赤みが生じることが多いのが特徴です。蕁麻疹の大きさ、形、位置は様々で、時には蕁麻疹が一緒になって大きな斑点になることもあります。

蕁麻疹は、皮膚の表面からヒスタミンやその他の化学物質が放出され、組織が膨張することによって生じます。

蕁麻疹は誰にでも起こる可能性がありますが、特にアレルギー体質や自己免疫疾患の既往のある人に起こりやすいといわれています。

発疹は一般的に湿疹よりも一過性で、通常24時間以内に消退しますが、他の発疹が消えていくにつれて新たな発疹が出現することもあります。

治療は、主に症状の緩和と誘発の原因の除去を中心に行われます。市販薬や処方薬の抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンの作用に対抗するため、最も一般的に使用されています。

慢性の蕁麻疹や重症の蕁麻疹の場合、当院GPから皮膚科専門医に紹介状を出すことになります。皮膚科専門医では、潜在的な誘発因子を特定するためにスキンテストなどの精密検査が行われます。より強い薬を処方したり、オマリズマブ(注射薬)や光線療法などの治療を勧めることがあります。

水虫

ブリスベンの温暖で湿度の高い気候は、真菌や細菌感染の温床となることがあります。特に公共のプールやジムによく行く人の間では、「水虫」がよく見られます。

水虫の症状には以下のようなものがあります:

・かゆみ、灼熱感、チクチク感: このような感覚は、特に足の指の間や足の裏に多くみられます。

・皮膚の乾燥、鱗屑: 特に足の指の間や足の裏の皮膚が乾燥し、カサカサして鱗状になることが多いです。

・水疱: 水疱ができ、場合によっては液体がにじみ出ることもあります。水疱が破れると、生乾きの皮膚になり、痛みを伴うことがあります。

・ひび割れや皮むけ: 足の裏や側面が乾燥し、ひび割れることがあります。痛みを伴い、放置すると二次的な細菌感染につながることもあります。

水虫が疑われる場合は、他の部位や他の人への感染を防ぐため、速やかに治療することが重要です。

早期発見・早期受診は、合併症を予防し、早期回復に役立ちます。オーストラリアのGPや皮膚科医は、外用抗真菌薬、内服抗真菌薬、または副腎皮質ステロイド薬を処方して、この症状に対処します。

ニキビとブリスベンの気候

ニキビは、吹き出物や黒ずみ、時には深い膿胞や結節を特徴とする一般的な皮膚疾患です。ブリスベンの夏の湿度と暑さは、時に肌の過剰な皮脂分泌を促し、毛穴の詰まりやニキビの吹き出物を引き起こします。環境の変化やストレスで、こちらに来た日本人の方でニキビが悪化するケースはとてもよく見られます。

まずは、マイルドで乾燥しにくい洗顔料で患部をやさしく洗い、余分な皮脂や古い角質を取り除きましょう。ゴシゴシこするのは、肌をさらに刺激するので避けましょう。

サリチル酸や過酸化ベンゾイルのような成分を含む市販の治療薬は、炎症や細菌の増殖を抑えるのに役立ちます。肌が乾燥しすぎないように、オイルフリーの軽い保湿剤を使うことも大切です。

また、ニキビを押しつぶしたり、弾けさせたりすることは、傷跡を残したり、感染症を引き起こす可能性があるので控えましょう。

市販の治療薬で満足のいく結果が得られない場合は、GPに相談することをお勧めします。GPでは、色々な塗り薬や、抗生物質やニキビ用のピルなどの飲み薬で治療していくことが可能です。GPでの治療で改善が見られない場合は、皮膚科専門医へ紹介状を出すことになります。オーストラリアの皮膚科専門医では、より強力な局所治療薬や内服薬を処方し、個々のニーズに合わせた指導を行うことができます。

にきび治療の期間中は、肌が日焼けしやすくなることがあるため、日焼けから肌を守ることを心がけてください。

自分の肌タイプに合ったバランスの取れたスキンケアを習慣にし、食生活を見直すことも効果的です。

虫刺されと肌

自然の多いオーストラリアでは、虫刺されに悩まされることが多くあります。ブリスベンやケアンズを含むクイーンズランド州では夏場にかけて、特に朝夕の水辺でサンドフライというとても小さなハエのような虫に刺されるケースが多く見受けられます。日本人旅行者も、海辺でのバーベキューなどで被害を受けることが多くあります。

サンドフライに刺された場合は、腕や足などに酷いかゆみを伴う小さなたくさんの発疹ができます。痒みは1-2週間続きます。目に見えないくらい小さな虫なので、虫よけスプレーや長袖でしっかり刺されないように、予め予防していくことがとても大切です。日本人旅行者が滞在先として使うこともあるバックパッカーやモーテルではトコジラミが出ることもあります。刺されると、腹部などに赤くて刺激性のぶつぶつが数か所できます。プールサイドなどの屋外でスズメバチなどのハチに刺されたり、森林を歩いていてクモに刺されたりした場合も、皮膚反応を起こすことがあり、専門医の診察を受ける必要があります。郊外のファームや森の中ではマダニの被害も見られます。

一般的な虫刺されによる症状を緩和するために、家庭でできる治療法やセルフケアは数多くあります。しかし、症状が長引いたり、悪化したり、アレルギー反応の兆候が見られたりする場合は、医師の診察を受けることが重要です。以下は一般的なガイドラインになります:

蚊やサンドフライ:

・ 冷湿布: 冷たい布や氷をタオルに包んで患部を冷やすことで、腫れを抑え、かゆみを和らげます。

・外用クリーム: カラミンやヒドロコルチゾンを含む市販のクリームは、かゆみを抑えるのに役立ちます。

トコジラミ:

・掻かない:感染を引き起こす可能性があるので、できるだけ掻かないでください。

・抗ヒスタミン薬: 市販の抗ヒスタミン薬は、特に夜間のかゆみを抑えるのに役立ちます。

ハチに刺された場合:

・針を取り除く: ハチに刺された場合は、クレジットカードの端などを使って針をかき出してみましょう。ピンセットを使うと、皮膚に毒が入りやすくなるので避けてください。

・冷湿布: 患部を冷やすことで、痛みや腫れを抑えます。

・鎮痛剤:パナドールなどの 市販の鎮痛剤で痛みを抑えることができます。

虫刺されや刺傷に対する一般的な応急処置を記載しましたが、人それぞれで状況により体の反応は異なります。症状が心配な場合やお薬が必要な場合は、ぜひ医師にご相談ください。

虫に刺されたことで、アレルギー反応が出てしまうこともあります。呼吸困難、患部の腫れ、心拍の速さ、じんましんなどの症状が現れた場合には、直ちに医療機関の診察を受けてください。

オーストラリアでの皮膚科アドバイス

ブリスベンのサクラファミリークリニックでは、上記のような経験をされた日本人の患者さんを数多く診察しています。当院には日本人医師、日本人の医療通訳、受付が常在し、日本語での診察が円滑に行われています。皮膚科への紹介の際には、日本語医療通訳のスタッフが同行するサービスも提供しています。患者さんとご家族がブリスベンで安心して毎日を健康に過ごすことが出来るよう、医療面でサポートしています。

オーストラリアでは、日本とは違い、患者さんがご自身で皮膚科を受診することが出来ません。皮膚科にかかるには、まずはかかりつけのGPクリニックで診察を受けて、GPから専門医に紹介状を出してもらう必要があります。どこの皮膚科でも紹介状があってもすぐに見てもらうのは至難の業で、緊急度が高くない場合は、通常2、3か月ほどの待期期間があります。

終わりに

ブリスベンは気候も環境もよく、日本人の旅行者や長期滞在者にはとても人気があります。環境の変化に伴っての肌のトラブルも多くありますが、適切なケアによって、症状の改善が期待できます。オーストラリアに来てから肌の疾患で悩んでいる場合は、お気軽にご相談ください。

さくらファミリークリニックは、ブリスベンで最も信頼のおける、評価の高い皮膚科医チームと提携しています。かかりつけ医として優れた専門医としっかりコミュニケーションを取りつつ、日本語で患者さんをサポートしていくことが可能です。様々な肌のトラブルに関しても安心して診察を受けることができます。

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